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思えば、どうして北野武の映画に常に引き込まれるのだろうか。性、血、暴力、不条理、わがまま、見る影もないことさえも覚えさせる時があるが、どうしてそんなに心が惹かれたのだろうか。無言、正面からの人物像、滑稽、腕白さと死、却って純潔に変わってしまう。一切合切が人の眼目を掴む。まさか北野武は極悪を潔白へ転換する力があるのだろうか。その中に憧れられる稟性がある。見切りがよい、孤独無言ながら意思がある。「顔立ちが見苦しいが、目がなかなか綺麗だ」。北野武に最もふさわしい言葉であろう。多分私は北野武への印象は大島渚監督の映画から体得してきたものであろうか。その血塗れの、少なからず悪たれ口をきいている人は砂浜でボールとか何とか自分の子分や娼婦や激しげに、楽しげに戯れる時がある。その中から深く感じられているのがむしろ愉快そのものであった。それは多分子供らしい、愛おしい映画によく見受けられる久石譲がと血と暴力の映画に長ける北野武と合作する原因ではなかろうか。気ままに人を殺しすとか、相手にけちを付けられるとガラス瓶で頭にぶっ飛ばすとか、気が食わないと付き添う肉体関係のある女の頭をぶっ叩くとか、取り立てのやくざを皆殺してから死に免れる無実な女を強暴するとか、人間そのものが生まれ落ちてから備えてきた自我反省と無縁のように、まっすぐに自分が望んでいることへきっと目をやる。悪の中にはみ出される腕白さから奇妙な背徳の快感と人間の真面目が感じられ、血みどろな銃弾と真っ夏の海の明かり、騙殺して奪って来る銃とそれを包む艶やかなストレリチア、菊と刀、自由さと美の境界に引きずり込まれる。
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